ME機器管理センター

ME機器管理センターは、1999年から7年間の準備期間を経て2005年3月に中央診療部門として設置されました。

院内では生命維持管理装置を中心としたさまざまな医療機器の保守点検・管理・操作・教育と、各診療科・部門・センターへの臨床技術提供を通じて医療機器の安全使用と効率的運用を図っております。

ごあいさつ

近年の医療機器は目覚ましい進歩を遂げ、医療の重要な一翼を担っており、医療の分野に大きな役割を果たしています。生命維持管理装置の操作及び保守点検等には、医学的知識ばかりでなく、工学的知識も必要になり、さらに装置そのものも時代とともにますます高度かつ複雑なものとなってきています。このため、医学的知識と工学的知識を併せもつ臨床工学技士(clinical engineer,CE)の存在が必要とされました。当院では2005年3月からME機器管理センター開設に伴い、病院内の各部署の要請に答えるとともに、医療機器の安全性を保証する体制を整えてきました。
現在は、3つのチームによる体制で、ME機器管理センター、血液浄化部、高気圧酸素治療室、光学医療診療部、人工呼吸療法、心臓カテーテル検査、心臓電気生理検査、ICU、救命救急センター、手術部、臓器移植医療部の各部署における診療と医療機器の操作および保守管理を担当しております。チーム内では、各部署にリーダーとサブリーダーを配置し、スタッフのローテーションや教育・研修体制を確立することで、質の高い業務を提供しています。
ME機器管理センターは、医療機器の保守管理を中心に、CEの業務の適正な運用と資質の向上に取り組みながら、医療の普及・向上と安全確保に貢献していくことを目指しています。今後も引き続きご支援をいただければ幸いです。

ME機器管理センター部長
(循環病態内科学教室 教授、循環器内科 診療科長、医療機器安全管理責任者)
安斉 俊久

ME機器管理センターの概要

ME機器管理センターは、中央診療棟地下1階に位置し、複数の施設が備えられています。その概要は以下の通りです。

・保管室:各部署に貸し出しする中央管理の医療機器の保管が行われる部屋です。

・洗浄室:医療機器の洗浄および消毒が行われる部屋です。

・整備室:医療機器の点検、修理、整備が行われる部屋です。

・スタッフ室:書類業務や研修を行うためのスペースです。

・休憩室:休憩を取るためのスペースです。

・更衣室:白衣に着替えるためのスペースです。

・ICUと手術部にも分室が設けられており、そこでも業務を行います。

 

ME機器管理センターには33名のCEがおり、安全かつ確実な技術提供に努めると同時に、互いに業務をサポートしあっています。また、高度な技術を持つ外部委託医療機器技術スタッフとも協力し、医療機器の保守管理業務を行っています。

手術チーム

手術部 心臓カテーテル
検査
電気生理検査 救命救急センター ME機器管理センター
人工呼吸療法
(材料部・臓器移植医療部)

血液浄化チーム

光学医療
診療部

高気圧酸素
治療室

血液浄化部

ICUチーム

ICU

基本方針

ME機器管理センターは生命維持管理装置の操作と医療機器の保守点検を通じ医療の安全と普及及び向上に寄与します。

目標

  • 安心安全な医療機器の臨床提供と安全対策の実施
  • 医療機器を活用した安全で高度な臨床技術の提供
  • 医療機器を通じたQOL向上の支援
  • チーム医療の推進と実践
  • 優れた臨床工学技士の育成
  • 先端的医療の修得ならびに研究

ME機器管理センターの業務

医療機器保守管理

6,100台(2024年4月)の医療機器を管理し、徹底した精度管理と早期の異常検出および修理を遂行しております。

  • 終業点検、定期点検による精度確保
  • 清掃と除菌による清潔保持
  • 異常発生時の原因究明および修理と対策
  • メーカーとの情報交換
  • 安全教育活動
  • 新規採用医療機器、材料の試験
  • 関連知識の院内広報
  • 病棟、診療科への貸し出し業務

手術チーム

  • 手術部内の医療機器保守管理
    手術部内の医療機器保守管理では、17部屋の手術室において、定期手術前に様々な医療機器の稼働状態を点検します。主な点検対象は麻酔器、手術台、術野カメラ装置、無影灯、血液ガス分析装置、除細動器などです。CEは点検表に基づく整備を行い、早期の異常発見と精度管理を行います。特殊装置については、計画的なメーカー定期点検を実施し、安全な手術室業務の遂行に努めます。さらに、手術中に医療機器のトラブルが発生した場合は、速やかに解決する必要があります。これらのトラブルは記録され、その結果が分析され、対応策が検討されます。このプロセスを通じて、医療機器の安全な使用が確保されるよう努めております。
  • 自己血回収装置
    自己血回収装置は、心臓血管外科や整形外科手術などで使用され、手術中に出血した血液を回収し、遠心分離して再利用可能な血液を作成します。この装置の操作はCEが担当し、手術中に血液回収装置を適切に操作して血液を回収し、その後の処理を行います。具体的には、手術中に装置を適切にセットアップし、出血した血液を回収します。回収された血液は装置内で遠心分離され、血液成分が分離された後、再利用可能な血液が得られます。CEはこのプロセスを監視し、装置の正確な操作と安全性を確保します。
  • レーザー装置
    産科、婦人科、皮膚科、形成外科などの手術では、レーザー装置による焼灼療法が頻繁に行われます。CEはこれらの手術で使用されるレーザー装置の準備、設定、および装置の点検を担当します。具体的には、手術前にレーザー装置を準備し、正確な設定を行います。手術中は、レーザーの適切な使用と安全性を確保するために装置を監視し、必要に応じて調整を行います。また、定期的な点検を通じて装置の動作を確認し、異常があれば速やかに修理や交換を行います。
  • 眼科手術装置
    眼科手術では、様々な手術装置が使用されます。例えば、白内障手術では超音波乳化吸引装置が使用され、硝子体手術では硝子体切除装置が必要です。また、レーザー装置も眼科手術で頻繁に使用されます。CEはこれらの眼科手術装置の操作に対応し、適切な設置と点検を行います。特に手術用顕微鏡は、手術中に重要な役割を果たしますので、使用前の点検は欠かせません。CEは手術用顕微鏡の設置と使用前点検を行い、手術が安全に実施されるようサポートします。
  • 腹腔・胸腔・関節鏡、外科的内視鏡管理装置
    内視鏡を用いた外科手術は増加しており、それに伴い各種内視鏡ユニットの手術室内での配置や保守点検、カメラ接続時の設定、画像記録などが重要です。CEはこれらの内視鏡管理装置の適切な配置や保守点検を行い、手術が円滑に進むようにサポートします。また、手術中にはカメラ接続や画像記録などの操作を担当し、各スタッフが手術に集中できるよう支援します。
  • ロボット手術
    手術支援ロボットは、精密な手術動作を可能にし、従来の内視鏡手術の利点をさらに高める医療機器です。その高度な技術により、手術の精度や安全性が向上し、術後の回復を促進します。CEは、このような高度な機器の準備や片付け、手術中のトラブル対応、周辺機器の管理などを行い、手術が安全かつ円滑に進行するよう支援しています。
  • 人工心肺装置
    人工心肺装置は、心臓血管外科手術において不可欠な装置の一つです。CEは手術部内で行う業務の中で、人工心肺装置を含む生命維持管理装置の操作を担当しています。この操作は非常に高度な技術が必要であり、CEは日々研鑽を積み重ねています。人工心肺装置の操作には、装置自体だけでなく周辺機器の操作や記録も含まれます。さらに、症例によっては人工心臓や補助循環装置などの操作も行う場合があります。これらの装置を適切に操作することは、手術中の安全性の向上につながるため、常に最新の知識と技術を習得し、最高水準の医療を提供するために努力しています。
  • 腹腔・胸腔・関節鏡、外科的内視鏡管理装置
    内視鏡を用いた外科手術(腹腔鏡下胃切除術、胸腔鏡下肺切除術など)が増加しており、各種内視鏡、カメラセット、光源装置といった内視鏡ユニットの点検、カメラ接続時設定・操作、画像記録などが重要となります。
  • 補助人工心臓治療(心移植)
    補助人工心臓治療は重症心不全患者にとって重要な治療手段です。当院では心移植やDT(destination therapy)を行う施設として、補助人工心臓治療を提供しています。CEは、補助人工心臓植込み手術の際に必要な準備やセットアップ、コンソールの操作、駆動確認などを行います。また、外来や入院中には補助人工心臓の点検や定期的な物品交換を行うと同時に、患者様とそのご家族、医療スタッフに対して機器の研修を行います。
    在宅管理中に機器トラブルが発生した場合にも、CEは医師やレシピエントコーディネーターと協力してホットライン対応を行います。これにより、安心して在宅で治療を継続でき、安全性と生活の質(QOL)が向上できるよう努めております。補助人工心臓治療を受ける際の安心感と穏やかな生活を送ることを医療機器を通じて支援いたします。
  • 心臓カテーテル検査・治療
    循環器に関わる造影検査や血管内治療において、監視、計測、補助循環装置の操作を行います。検査業務では、冠動脈や大血管の造影中におけるバイタルサインの監視や右心カテーテル検査による心拍出量の測定、心内圧の同時測定などに各種装置を用いた正確な測定が重要です。治療業務では、ポリグラフの操作や治療物品の準備に加えて、血管内超音波(IVUS)、光干渉断層撮影(OCT)、部分血流予備量比(FFR)などの診断装置を用いて治療をサポートします。
    また、構造的心疾患に対するインターベンション治療である経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)や経皮的僧帽弁形成術(MitraClip)にもハートチームの一員として携わります。大動脈内バルーンポンピング(IABP)や経皮的心肺補助(ECMO)装置を用いるハイリスク症例では、迅速な判断と技術が求められます。そのため、日々知識と操作技術を磨き、緊急の心臓カテーテル検査・治療に24時間365日対応しています。
  • 心臓電気生理学的検査・治療
    ペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)などの植え込み型心臓電気デバイス(CIEDs)およびアブレーションに関連する業務を担当しています。CIEDsに関しては、外来における定期チェックや遠隔モニタリングの解析を行うほか、植込み時には心内電位、閾値、リード抵抗の測定、プログラミングなどを行います。アブレーション業務では、頻脈性不整脈に対する焼灼治療を行います。このために、必要な電極カテーテルの準備や部位特定のためのシュティムレータ(刺激装置)、ポリグラフ、3次元マッピング操作、高周波アブレーション装置、冷凍アブレーション装置の操作を行います。これらの業務を通じて、心臓電気生理学的検査・治療の技術を提供し、心臓の状態を適切に監視しています。

血液浄化チーム

  • 血液浄化部
    血液浄化部では、血液透析とアフェレシス、さらには血液浄化装置の保守管理を行っています。この部署では、院内発症の腎障害や手術・検査目的の入院透析を対象にしています。アフェレシスは、自己免疫疾患や肝不全、腎移植の抗体除去などの治療に用いられます。全身状態に応じて、一般病棟やICUにも出張して血液浄化療法を行います。血液浄化部では、多用途血液浄化装置12台、多人数用RO装置1台、個人用RO水処理装置2台、アフェレシス用血液浄化装置を保有しています。CEはこれらの装置の操作と保守管理を通じて、安全な治療を支援しています。異常動作時には、一時的な診断と修理を行います。特に血液透析では、監視装置と透析液供給のための逆浸透水処理装置が欠かせません。水質管理は合併症の発生や予防に重要であり、水処理装置の保守管理や水質管理が特に重要です。定期的に、水処理装置のフィルター交換や微粒子除去フィルターの交換、エンドトキシンやβ-Dグルカンの測定、細菌培養などを行い、学会基準を満たす水質の管理を徹底し安全な透析療法の実施に努めています。
  • 高気圧酸素治療室
    高気圧酸素治療室では、1998年8月から札幌市内で唯一の多人数収容可能な第2種装置(8人用)を使用しています。この装置は合成空気を用いた空気加圧方式で治療を行い、酸素マスクを介して高濃度の酸素を吸入することで、血液中に溶ける酸素を増やす治療を行っています。2005年2月からは、スポーツ選手を対象としたスポーツ外傷治療や、疲労回復を目的とした自費診療も開始されました。CEは高気圧酸素治療専門医の指示のもと、日常点検、装置操作、治療中の状態の把握、環境整備などを担当しています。緊急を要する場合には、夜間や休日でも治療を行っています。また、病態により医師が治療室内に付き添い処置を行うこともあります。令和5年度の治療実績は延治療回数で2,000回を超え、関係する疾患(形成外科、口腔科、整形外科、脳神経外科など)も幅広く対応しています。
  • 光学医療診療部(内視鏡室)
    内視鏡室は、消化管や気管内の病気の診断と治療を行う専門診療部門です。胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡スコープを使用し、早期消化管癌の治療や食道・胃静脈瘤治療、気管支や消化管からの出血に対する止血術などを行っています。また、胆膵系の診断や胆石除去などの治療も行っています。CEの主な業務は以下の通りです。①使用機器の各種点検、使用時のトラブル対応、機器および医用材料の管理などの保守管理業務。②内視鏡治療時に使用する切開ナイフや高周波スネアなどの治療用鉗子のセッティングや器械出しの介助。③洗浄消毒装置に使用する消毒液の濃度測定や内視鏡スコープの洗浄などの感染管理業務。これらの業務を通じて、内視鏡検査と治療の安全性を支援しています。
  • 救命救急センター
    救命救急センターは3次救急病院として年間約1,000名を受け入れています。CEとして、初期救命処置時には経皮的心肺補助装置(ECMO)の導入に関する回路の組立やプライミングなどの操作を行っており、24時間365日対応可能な体制を整えています。また、他の業務としては、センター内で管理されている心不全に対する心臓補助目的のImpellaの導入や医療機器の管理、操作のサポートや点検業務、急性腎障害や薬物中毒に対する急性血液浄化療法への対応、人工呼吸器やNPPV(非侵襲性陽圧換気)の準備や定期点検など、生命維持管理装置と呼ばれるさまざまな機器の管理や操作を主な業務としています。
  • 人工呼吸療法
    2003年より、全病棟で人工呼吸器のラウンド点検を開始し、呼吸不全や呼吸補助を必要とする患者に対する安全な呼吸療法と装置のトラブルを未然に防ぐ取り組みを行っています。この点検では、医師、看護師、理学療法士などからなる呼吸支援チームが協力し、各職種の専門的な視点から装置を点検しています。これにより、さらなる安全性を確保する努力をしています。
    また、院内全スタッフを対象に人工呼吸器の取り扱い方法や安全な使用に関する講習会を積極的に実施しています。さらに、院内認定の人工呼吸器安全管理認定者の育成講習にも講師や試験官として参加し、専門知識の普及に努めています。これらの取り組みにより、人工呼吸器の安全性を確保するための体制を整えています。
  • 臓器移植医療部
    肝移植の周術期における血液浄化療法や肝移植術中の補助体外循環に対応しています。臓器提供の手術においては、CEは外科医と共に参加し、全国の手術に対応しています。CEは医療機器の適切な操作や保守、トラブル対応などの役割を果たしながら、手術の成功に向けて積極的に貢献するよう努めています。

 

ICUチーム

  • ICU(集中治療部)は、手術後や重症な急性期のさまざまなな病態に対応するために、人工呼吸器、補助循環装置、血液浄化装置などの生命維持管理装置やシリンジポンプ、輸液ポンプ、生体情報モニタなどの医療機器を使用して集学的治療を行う部門です。安心安全で質の高い医療を提供するために、多職種で連携し、日々の業務に取り組んでいます。CEは、生命維持管理装置の操作や保守を通じて、この医療チームの一員として働いています。

 

所属学会等

日本臨床工学技士会
日本アフェレシス学会
日本医工学治療学会
日本移植学会
日本医療機器学会
日本高気圧環境・潜水医学会
日本生体医工学会
日本集中治療医学会
日本手術医学会
日本消化器内視鏡技師学会
日本心血管インターベンション学会
日本人工臓器学会
日本心臓病学会
日本体外循環技術医学会
日本大腸肛門病学会
日本透析医学会
日本不整脈心電学会
日本肝移植学会
IEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers)

認定資格等

認定資格等 取得者
臨床工学技士 30
臨床検査技師 4
看護師 1
第2種ME技術実力検定 27
透析技術認定士 9
3学会合同呼吸療法認定士 9
第1種ME技術実力検定 6
不整脈治療専門臨床工学技士 5
体外循環技術認定士 5
臨床ME専門認定士 5
人工心臓管理技術認定士 4
認定集中治療臨床工学技士 3
高気圧酸素治療専門技師 3
心血管インターベンション技師 3
血液浄化専門臨床工学技士 2
呼吸治療専門臨床工学技士 2
医療情報コミュニケータ 2
医療情報技師 2
植込み型心臓デバイス認定士 2
周術期管理チーム臨床工学技士 2
高気圧酸素治療専門臨床工学技士 1
手術関連専門臨床工学技士 1
心・血管カテーテル関連専門臨床工学技士 1
内視鏡関連専門臨床工学技士 1
集中治療専門臨床工学技士 1
認定医療機器管理臨床工学技士(追加) 1
日本アフェレシス学会認定士 1
消化器内視鏡技師(旧第一種内視鏡技師) 1
第1種滅菌技師 1
FCCS(Fundamental Critical Care Support) 1
BLSプロバイダーコース 1
ACLSプロバイダーコース 1
JHRS認定心電図専門士 1
小腸カプセル内視鏡読影支援技師 1

 

業績