クラウン・ブリッジ歯科

補綴(ほてつ)歯科は、歯やあごの骨の欠損を人工物により補い、その形態、機能を回復する治療法です。
当科では歯にかぶせる冠(クラウン)や抜けた歯の部分の周りの歯に橋渡しする橋義歯(ブリッジ)を中心として、取り外しの入れ歯(総義歯や部分床義歯)やあごの骨に埋め込むインプラント、あごの骨の欠損を補う顎義歯などの補綴治療を行っています。
また、顎の機能に関する治療として、顎関節症、歯ぎしり、睡眠時無呼吸症候群、スポーツ歯科に関連した治療を行っています。
なお、歯ぎしりの診療に関して、これまでの「歯ぎしり専門外来」の役割は、2022年4月から当科に統合されることになりました。

概要

治療方針

  • 歯の部分的な欠損や歯そのものの欠損、顎の骨の欠損に対して、生体に調和した人工材料を口腔内に適用することにより、形態の回復、障害された機能の改善と咬合(かみ合わせ)の保全をはかることを目的に治療を行います。
  • 歯の欠損の状態、咬み合わせやあごの機能の状態、全身的な他の病気の有無や体調の状態など、個々の患者さんの状況を的確に把握するため、十分な診察、検査を行います。
  • 診察、検査で得られた所見を総合的に判断して、診断し、治療方針を立てます。
  • 補綴治療の方法や使用材料の種類などには様々な選択肢がある場合が多いため、十分な説明に基づき、治療方針への患者さんの同意を得てから、治療を開始します。
  • 適切な咬み合わせや補綴物の形態をすぐに決定するのが難しい患者さんでは、仮の冠や仮の義歯を使用していただき、調整を繰り返してから、最終的な治療方針を決める場合もあります。
  • 必要に応じて他科(保存科、矯正科、口腔外科など)や医科との連携をはかり、治療計画の段階からのチームアプローチ(北大病院・形成外科、市立札幌病院ほか関連病院などとも連携)も進めております。

診療分野

一般的な補綴治療(クラウン、ブリッジ、義歯)、咬み合わせの異常に対する治療、インプラント治療、顎関節症の治療、歯ぎしりの治療、睡眠時無呼吸症候群のためのスプリント(マウスピース)、顎顔面補綴、唇顎口蓋裂や骨折治癒後の補綴治療、顎変形症の咬合の決定と外科的矯正治療術後の補綴治療、スポーツ選手のためのマウスガード、など

診療時間

初診受付:午前8時30分~午前12時(予約制)※午後の初診をご希望の方はご相談ください
再診受付:午前8時30分~午後4時(予約制)
診療時間:午前9時~午後5時
診療日:月曜日~金曜日
休診日:土曜日、日曜日、祝日、年末年始の休日

お問い合わせ 第五診療室 電話:011-706-4342、4343、4344(午前9時~午後5時まで)

担当医師

職名 氏名 専門分野 所属学会・指導医・認定医など
科長(教授) 山口 泰彦 歯科補綴学
顎関節症
日本補綴歯科学会専門医・指導医
日本顎関節学会専門医・指導医
外来医長(准教授) 上田 康夫 歯科補綴学 日本補綴歯科学会指導医・専門医
日本顎顔面補綴学会認定医

主な検査・設備

検査

  • 咬合力検査、顎機能検査(下記の機器を使用)
  • 睡眠時歯科筋電図検査(歯ぎしり検査)

設備

  • 咬合力測定システム(オクルーザー:かみ合せる力の大きさとバランスを測定するシステム)
  • 顎運動測定機(シロナソグラフ:顎の動きを3次元的に精密に測定できる機器)
  • 筋電図(咬むための筋肉(咀嚼筋)が適切に活動しているかを測定します)
  • ウェアラブル筋電計(患者さんの自宅で行う歯ぎしりの睡眠時歯科筋電図検査に用います)
ウェアラブル筋電計

診療実績

一般的な補綴治療

  • クラウン(冠):クラウンは歯の一部あるいは全体がむし歯などで欠損した場合に歯にかぶせる被せ物のことです。いわゆる差し歯もクラウンに含まれます。歯の神経が抜けてしまった歯根の穴に土台を立てて歯の形を再建する治療法が差し歯による治療に相当します。
  • クラウンには、金属冠、硬質レジン前装冠、硬質レジンジャケット冠、CAD/CAM冠、陶材焼付鋳造冠(メタルボンド)、ジルコニアセラミックスなどを活用したオールセラミック冠など多くの種類があります。色や材質、強度なども様々で、欠損した歯の状態や患者さんの希望に合わせ、適した種類のクラウン選ばれ、装着されます。
  • ブリッジ(橋義歯):ブリッジは歯の根から抜けてしまった欠損部分に人工の歯を隣の歯を支えとして橋渡しする治療です。材質はクラウンと同様様々ですが、強度の関係でブリッジには使えるないものもあります。
  • 接着性ブリッジ:歯が抜けた部分の隣の支えになる歯をできるだけ削らずに橋渡しの設計をするブリッジです。
  • ポーセレンラミネートベニア:変色した歯に対し、歯を薬液で白くする漂白治療では十分な色の改善が得られない場合に、歯の表面のエナメル質を一層削って歯の色をした薄いセラミックスのシェルを張り付ける治療です。健康保険の適用外です。
  • 義歯:一般的にブリッジは、支えとなる歯に合着し、取り外しを行う必要はありません。しかし、抜けた部分の歯の本数が多すぎるとブリッジで修復するのは難しく、取り外しの入れ歯(義歯)の適用になります。部分入れ歯、総入れ歯ともに行っています。使用する材質と設計方法によって健康保険適用の適否が変わります。

インプラント治療

  • インプラント:口腔インプラント治療部門外来と連携して、補綴治療全般における一つの選択肢として、インプラント埋入後の補綴治療を手がけております。ブリッジや義歯で治療する場合との比較や、あごの骨の状態など患者さんが口腔インプラント治療に適しているかどうかなどについて、十分に検討してから治療を進めます。

金属アレルギー患者さんの補綴治療

  • 金属アレルギーの診断を受けた患者さんに対し、セラミックやレジンなどの非金属の材料を用いた治療を行っています。最近は、保険の適用の治療も増えてきました。

顎関節症の治療

  • 顎が痛い、口が開かない、口を開け閉めする際に音が鳴る、などの症状がでる顎関節症に対して、スプリント(マウスピース)による治療を行うほか、スプリント治療後に必要に応じてクラウンやブリッジ、義歯を併用した補綴治療を行っています。顎関節症は、スプリントだけでなく、様々な治療法があり、患者さんの状況に合わせて併用したり、使い分けられたりします。そのため、他の診療科との連携をとりながら治療しています。

歯ぎしり(ブラキシズム)の治療

  • 歯ぎしりの影響
    歯ぎしりは、専門的にはブラキシズムと呼ばれ、歯のすり減り、歯周病、歯がしみる知覚過敏、歯に被せた冠の脱離や破損、歯や歯の根の破折、咀嚼筋や顎関節への負荷による顎関節症、頭痛などのリスクファクターと考えられています。最近は、日中の起きている時間帯にも無意識に歯を合わせて咬みしめている人がいて、覚醒時ブラキシズムと呼ばれています。
  • 歯ぎしりの原因
    ストレス、遺伝、交感神経活動の亢進、睡眠途中の覚醒が指摘されていますが、不明な点が多く残されています。咬み合わせの異常が発現に関与するかどうかについては諸説ありますが、直接的な原因ではないだろうという説が強くなっています。
  • 歯ぎしりの診断
    先ず、薬物や他の神経系の疾患(運動神経の疾患)など他の原因がないか確認します。その後にウェアラブル筋電計を使って、自宅での筋電図検査を行い、歯ぎしりの回数や大きさを評価し、歯ぎしりがあるかどうかを判定します。筋電図を使えない場合には、歯のすり減りの度合い、同室者からの音の指摘、起床時の顎のだるさや痛みの有無などから総合的に判定します。
  • 歯ぎしりの治療法
    現在、世界的に最も標準的に使用されているブラキシズムの治療法はスプリントです。スプリントを使用してもブラキシズムを抑制できない場合もありますが、歯や顎関節などの組織を保護する効果が期待されています。
    ブラキシズムが顎関節症を引き起こしていると考えられる場合には顎関節症の治療を、歯周病が生じている場合には歯周病の治療を併行して行います。
    咬み合わせの異常がブラキシズムの直接的な原因になっていると判断できないので、現在ではブラキシズムを改善する目的のためだけで歯を削って調整する治療は行いません。しかし、一部の歯にだけ大きな力が加わり、歯周病などに悪影響を及ぼすと判断された場合には、過剰な力が加わらないようにかみ合わせを調整するなどの対策をとることがあります。
    不安定な睡眠がブラキシズムを誘発する可能性があるため、睡眠に関する生活習慣や睡眠の環境などについて検討する場合があります。
    日中の覚醒時ブラキシズムについては、患者さん自身で日常の生活時を注意深く観察していただき、食事や会話、唾を飲む時など以外では、上下の歯が接触していない状態を習慣づけるようにしてもらいます。

睡眠時無呼吸症候群、いびきの治療

  • 閉塞型睡眠時無呼吸症候群やいびきに対し、口腔内装置(スリープスプリント)を用いて治療します。
  • 治療のためには医科の専門医の診断が必要です。北大以外の病院も含めて、医科との連携をとって治療を進めています。
  • いびきだけの場合でも、口腔内装置でいびきが改善する場合がありますが、保険は適用されません。
  • 口腔内装置は上下の歯並びにはめるプラスチック製のマウスピースです。下の顎を前に出した状態で固定し、あごが奥に下がらないようにします。これによって同時に気道も広がり、気道閉塞による無呼吸発作を止める効果があります。
  • 装置使用期間中は、定期的に通院し、状態を経過観察する必要があります。

顎顔面補綴

  • 顎義歯(腫瘍の切除、外傷などで顎の一部を失った際に、それを補う入れ歯を作る治療です)、舌接触補助床、などの作製を行っています。

唇顎口蓋裂や骨折治癒後の補綴治療

  • 口蓋閉鎖床(口蓋裂などで上顎に孔が残っている場合)やメタルリテーナー(歯列矯正の治療後に歯の移動を防止するために、上顎に装着する金属製の入れ歯様の装置)の作製。
  • クラウン、ブリッジ、義歯、インプラントなどを組み合わせた咬合再構成など。

顎変形症の咬合の決定と外科的矯正治療術後の補綴治療

  • 外科的矯正治療(手術による顎の移動)の際の術後の咬み合わせ位置の決定(チーム医療として、口腔外科、形成外科、矯正科、補綴科が協力して行います)と手術用シーネの作製、および術後の補綴治療を行います。

スポーツ選手のためのマウスガード

  • スポーツ時の外傷から歯を守るラバー系のマウスガードです(健康保険の適用外)。