リカバリー外来

北海道大学病院では、平成28年4月4日より「リカバリー外来」(精神科神経科専門外来)を開始しました。

リカバリー外来について

精神障害の治療目標として近年注目されている「リカバリー」という言葉をご存知でしょうか。リカバリーにおいては、患者さんが社会の中で役割を担って、満足感を持って暮らしていくことが重視されます。このようなリカバリーの達成のため、症状が治まった後の回復期におけるリハビリテーションが、とても重要だと考えられるようになってきました。
リカバリー達成のために役立つリハビリテーションは数多くありますが、注目されているものの一つは、脳の記憶力や、集中力、順序立てて考える力などの障害である「認知機能障害」に対するリハビリテーションです。統合失調症や、うつ病、躁うつ病(双極性障害)の患者さんでは、治療で症状がおさまった後にも、認知機能障害が続く事がわかっています。病気の症状がおさまったのに社会復帰がうまくいかない場合、認知機能障害が原因の1つである可能性があるのです。この認知機能障害に焦点を当てたリハビリテーションが、「認知リハビリテーション」です。認知リハビリテーションが社会で暮らす能力の回復に役立つことが示されていますが、道内で系統的な認知リハビリテーションを受けることができる精神科医療機関はまだ限られているのが現状です。私たちは平成22年から、現在日本国内で最も普及している認知リハビリテーションプログラムである、NEAR(the Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation)という技法に着目し、多くの統合失調症、うつ病、躁うつ病の患者さんに認知リハビリテーションを提供し、その効果を確認してきました。
また、うつ病や躁うつ病の患者さんでは、休職後の職場復帰や、退職後の再就労に直接に焦点を当てた「復職支援プログラム」も効果が高い事がわかってきました。私たちはこの領域においても、外来作業療法に集団認知行動療法を組み合わせた総合的な回復期の復職支援プログラムであるRAP(Rework Assist Program)を平成18年から開始し、平成23年には対象を社会復帰全般に拡大したうつ病回復活性化統合プログラム(HIRAP:Hokkaido University Hospital Integrated Recovery Activate Program for Depression)をスタートさせ、多くのうつ病、躁うつ病の患者さんの社会復帰を支援してきました。(プログラム名にうつ病とついていますが、現在は躁うつ病の患者さんも対象としています)
今回私たちは、これまで蓄積してきたノウハウを元に、統合失調症、うつ病、躁うつ病の患者さんを対象とした「認知リハビリテーション」、うつ病、躁うつ病の患者さんを対象とした「社会復帰支援プログラム:HIRAP」を提供し、患者さんのリカバリーをサポートする「リカバリー外来」を新規に立ち上げました。
この外来を通じて、一人でも多くの患者さんがリカバリーを達成するためのお手伝いをする事ができれば、これに勝る喜びはありません。

対象となる方

    • 認知リハビリテーション
      統合失調症、うつ病、躁うつ病(双極性障害)のいずれかの診断で、他院(以下かかりつけ医)通院中の方で、「認知リハビリテーション」を希望する方(かかりつけ医の紹介状が必要です)

 

  • 社会復帰支援プログラム:HIRAP
    うつ病、躁うつ病(双極性障害)のいずれかの診断で、他院(以下かかりつけ医)通院中の方で、「社会復帰支援(または何らかの形での社会復帰の支援)」を希望する方(かかりつけ医の紹介状が必要です)

外来受診の予約

かかりつけ医か患者さんご本人に当科外来まで電話していただき、外来受診の予約をおとりいただきます。予約の電話にて、患者さんの診断名、希望するプログラム名、かかりつけ医からの紹介状の有無を確認させていただきます。
※精神科神経科外来:011-716-1161(内線5774又は5775)

外来受診

診察時に、かかりつけ医の紹介状をお持ちください。1回目の診察では、リハビリテーションプログラムへの参加が可能かどうかを確認し、いくつかの検査を受けていただきます。また、1回目の診察後すぐに当科外来作業療法への試験的な通所が開始となります。
3週間後の2回目の診察で検査結果をお伝えします。また試験通所の状況も踏まえて、プログラムが開始できるかどうかが決まります。
「認知リハビリテーション」「HIRAP」のどちらを希望される患者さんも、プログラム期間中は当科に通院していただきます。プログラムが終了したら、プログラムの報告書とかかりつけ医への紹介状が作成され、かかりつけ医のもとでの通院を再開していただきます。
リカバリー外来は、リハビリテーションプログラムの提供を目的としておりますので、プログラム終了後や、なんらかの理由によるプログラム中断後の継続診療は行っておりませんので、予めご了承ください。
費用は、医療保険の3割負担で、1日660~810円+再診料がかかります。自立支援公費負担制度の適用を受けている方は収入等により異なります。現在の病院で自立支援の受給者証が発行されている方は、北大病院転院後の診察・検査・リハビリテーションが3割負担となりますので、当科初診後に変更手続きが必要となります。

リカバリー外来の流れ

  • 外来受診の予約
    かかりつけ医または患者さん、ご家族から精神科神経科外来へ。
    (011-716-1161内線5774または5775: 精神科外来)
  • 外来受診
    初回診察。
    約1時間程度の診察で病歴と現在の状況を確認(かかりつけ医からの紹介状を必ず持参して下さい)。
  • 検査
    認知リハビリテーション希望の場合→認知機能検査など
    社会復帰支援(HIRAP)希望の場合→認知機能検査、心理検査など
  • 外来作業療法試験通所
    週2回程度、外来作業療法に試験的に通所。
  • 外来受診2回目
    ③の検査と④の試験通所の状況をみて、プログラムの開始を決定。
  • プログラム開始
    認知リハビリテーションか社会復帰支援(HIRAP)いずれか希望のリハビリテーションを開始。
    統合失調症の患者さんの認知リハビリテーションは6ヶ月
    うつ病、躁うつ病患者さんの認知リハビリテーションは3ヶ月
    うつ病、躁うつ病患者さんの社会復帰支援(HIRAP)は3ヶ月
    この間、3週間に1回、当科外来に通院。
  • プログラム終了
    参加したリハビリテーションプログラムの終了報告書と、リカバリー外来医師からかかりつけ医あての診療情報提供書を受け取り、かかりつけ医の外来に戻る。

プログラム内容

    • 「認知リハビリテーション」プログラム
      パソコンのソフトを利用して認知機能を鍛える、「パソコンセッション」と、グループで認知機能について勉強する「言語セッション」の2つのパートからなります。統合失調症の方は、パソコンセッションが毎週火、金の午前、言語セッションが毎週月曜日の午後になります。プログラムは全体で6ヶ月間です。うつ病、躁うつ病の方は、パソコンセッションが毎週月、木の午前、言語セッションが毎週月曜日の午後になります。プログラムは全体で3ヶ月間です。

 

  • 「社会復帰支援(HIRAP)」プログラム
    外来での作業療法と、グループでの認知行動療法から構成されます。外来作業療法は、毎週月、火、木、金の午前、グループの認知行動療法は毎週火曜日の午後になります。プログラムは全部で3ヶ月です。

スケジュール

認知リハビリテーションのスケジュール

11:15~12:15 パソコン
(うつ/躁うつ)
パソコン
(統合失調症)
パソコン
(うつ/躁うつ)
パソコン
(統合失調症)
13:00~14:00 言語セッション
(うつ/躁うつ)
言語セッション
(統合失調症)

社会復帰(HIRAP)のスケジュール

10:00~12:00
(11:15~12:15)
外来作業療法
創作活動等
(パソコン)
外来作業療法
軽スポーツ
リラックス
外来作業療法
創作活動等
(パソコン)
外来作業療法
創作活動等
13:00~14:00 (言語セッション) 集団認知行動療法

※認知リハビリテーションとHIRAPを併用する場合は( )の内容になります。